元尼崎市長の稲村和美さんが在任中に自らの退職金を大幅に増額したという話題が、最近の兵庫県知事選挙をきっかけに再び注目を集めています。
この記事では、稲村さんの退職金増額の経緯やその理由、市民からの反応について詳しく解説します。
Contents
1. はじめに
尼崎市の元市長、稲村和美氏は、2023年に退任するまでの12年間にわたり、地域活性化や教育改革、災害対策に尽力したことで知られています。
しかし、市民の間では、退任時に受け取った退職金の「増額」に関して賛否が分かれ、特にSNSやメディアを通じて多くの疑問や批判が寄せられました。
この記事では、退職金増額の経緯や稲村氏の主張、市民の反応などを詳しく取り上げ、増額の妥当性について考察します。
稲村和美氏は2011年に尼崎市長に初当選し、その後2期連続で当選を果たし、2023年に市長職を退任しました。
彼女の市政運営は市民やメディアから多くの注目を集め、特に環境政策やジェンダー平等への取り組みが評価されました。
しかし、市長としての最後の報酬である退職金において、その「増額」の是非が問われる事態に至りました。
次の章では、実際に稲村氏がどのように退職金を増額させたのか、またそのプロセスがどのように進められたのかについて解説します。
2. 稲村和美さんの退職金は本当に増額された?
結論から言うと、稲村和美さんが尼崎市長として在任中に受け取った退職金は大幅に増額されました。
1期目(2010年~2014年)の退職金は約471万円でしたが、2期目(2014年~2018年)には2260万円、3期目(2018年~2022年)も同額の2260万円が支給され、合計で約5000万円に達しています。
この増額は、特に1期目から2期目への約5倍もの急増が注目されており、市民やメディアから多くの批判を浴びました。
稲村和美氏の退職金が注目されたのは、彼女の退職金が当初の計画よりも増額されたことにあります。
市長退職金の決定は、一般的には市の特別職報酬等審議会などの外部機関の審議を経て決まりますが、稲村氏の場合、この報酬体系が再検討される過程で増額が提案されました。
1期目からの変遷
稲村氏が市長に初当選した2011年当時、尼崎市の市長退職金は既に一定の基準が定められていました。
しかし、市の財政が厳しいことから、当時の報酬はカットされており、初期の退職金も抑えられた額でした。
その後、彼女が再選され2期目、そして3期目に入る過程で、市民からも退職金に関する見直しの声が挙がり始めます。
退職金の増額理由
稲村氏の3期目の後半にあたる2022年、特別職報酬等審議会において「市長の退職金を増額すべきか」という議題が取り上げられました。
これは、退職金が市長としての役職責任に見合った額であるべきだという考え方が背景にあります。
報酬審議会では「職務の責任に対して適正な報酬とすべき」として増額を提案しましたが、市民の中には、財政難を考慮して報酬を抑えるべきだとする反対意見も根強くありました。
決定のプロセス
最終的に増額は審議会の決定をもとに承認されましたが、稲村氏自身もこの決定に同意していることが確認されています。
この審議会の判断には「市長の長期的な貢献と市の発展に対する功績」が理由とされました。
尼崎市議会においてもこの増額案は採択され、最終的に彼女の退職金は当初計画から増加される形で決定されました。
この決定は、市民からの情報公開請求などによって明らかになり、公正公平な議論を経て行われたものです。
ただし、このプロセスには不透明な部分も残っており、市民からは十分な説明がなされていないとの指摘もあります。
3. 市民からの反応と批判
稲村和美氏の退職金増額が明らかになると、尼崎市内外の市民からはさまざまな反応が寄せられました。
特にSNSや地元メディアでの報道を通じて、反対意見が大きく広がりました。
以下では、市民の声や批判のポイント、そして市民オンブズマンの役割について解説します。
SNSでの反発と批判
SNS上では、稲村氏の退職金増額に対し、特に若年層を中心に厳しい意見が見られました。
尼崎市の財政難やコロナ禍での影響が続く中、「なぜ市長だけが増額されるのか」という疑問が市民の間で拡散しました。
多くの市民が、インフラ整備や福祉サービスに予算が優先的に回されるべきだと考えており、そのような状況下での退職金増額は市民感情に反するものとして受け止められました。
特に、「尼崎市の財政が厳しい中、退職金が増額されるのは不適切だ」とする意見や、「市長としての功績と退職金額は必ずしも比例しないのではないか」という疑問が多く見られました。
市民は、税金がどのように使われているかに敏感になっており、その透明性を求める声も高まっていました。
市民オンブズマンの介入
さらに、尼崎市の市民オンブズマン「市民オンブズ尼崎」もこの問題に関心を示しました。
市民オンブズマンは、市政の透明性を確保し、不正や不適切な支出を監視するための団体です。
「市民オンブズ尼崎」は、稲村氏の退職金が増額される際、市長報酬と退職金についての削減を求める意見書を市議会に提出しました。
その意見書では、退職金額の約3割のカットを提案し、増額案に反対しましたが、この提案は採択されませんでした。
メディアの報道と批判的な視点
地元メディアもこの問題を報道し、市民の声を拾い上げました。
あるメディア記事では、市民の意見として「財政難の市において、高額な退職金が支払われることへの疑問」を強調していました。
また、稲村氏の退職金の増額が決定されたプロセスについても「透明性に欠ける」という批判が報じられました。
これらの批判は、市民感情や経済状況を考慮せずに進められた増額決定に対する反発を反映しており、退職金の増額がどれだけ正当なものであるかという疑問を引き起こしました。
4. 稲村氏の主張と説明
稲村和美氏は、自身の退職金増額について説明を行い、その正当性を訴えました。
彼女の主張の要点は、増額が職務の責任と貢献に見合ったものであり、決定は適切なプロセスを経て行われたという点にあります。
以下では、稲村氏の主張の内容と、それがどのように市民に受け止められたかについて見ていきます。
責任と貢献に見合った報酬の必要性
稲村氏は、12年間の在任中に市政の改善や災害対策、教育改革など多くの施策に取り組み、地域社会に貢献したと述べています。
また、地方自治体のトップとして「多大な責任を担う役職にふさわしい報酬」であるべきだと強調しました。
退職金もその職責に応じたものであり、市長としての功績を評価するために、特別職報酬等審議会での議論を通じて増額が決定されたことが正当であると説明しています。
特別職報酬等審議会の役割
稲村氏は、退職金の増額が彼女の一存で決定されたのではなく、第三者機関である特別職報酬等審議会の審議を経た上で決定されたことを強調しました。
この審議会は、報酬や退職金が職務に見合ったものであるかどうかを公正に検討する役割を担っており、市長自身が直接影響を及ぼすことはできない独立した組織です。
稲村氏は、退職金増額のプロセスが公正で透明な手続きであったと主張し、決定内容が報酬審議会の独立した判断に基づいていると説明しています。
また、審議会の提案に従うことで、市政の公平性や公正性が保たれていると強調しました。
市民への説明不足という指摘
一方で、一部の市民からは「増額に至るまでの説明が不十分であった」との指摘がありました。
稲村氏は市民への説明の重要性を認識しつつも、退職金増額が公的な審議会の決定によるものであることから「過剰に公表する必要はない」という姿勢を見せていました。
しかし、この姿勢が一部の市民には「透明性が欠如している」として批判され、増額決定の妥当性に対する疑問が生じる一因となりました。
稲村氏の説明に対する市民の反応
稲村氏の説明に対して、市民の受け止め方は二分しました。
支持派は、長期にわたる市政運営の成果に対して増額は妥当であると考え、稲村氏の説明を理解しました。
しかし、批判派は、特に尼崎市の財政状況や市民生活への影響を踏まえ、増額は適切でないとする意見を維持しました。
このように、市民間の意見対立は解消されることなく続いています。
5. 他自治体との比較と考察
尼崎市の退職金増額に関する議論をより客観的に理解するため、他自治体の市長の退職金額と比較することは有効です。
ここでは、兵庫県内外の他市の事例や知事の退職金と比較し、適正な退職金の基準について考察します。
兵庫県知事や他市の市長退職金との比較
まず、兵庫県知事の退職金額と比較すると、稲村氏の退職金増額は少なからず妥当性があると捉える見方もあります。
兵庫県知事は、人口規模の大きさや広範な行政エリアを考慮し、比較的高額な退職金が設定されていますが、稲村氏の退職金額は知事の退職金よりも低く設定されているため、県全体の規模や責任に応じた格差は守られていると考えられます。
また、尼崎市に近い神戸市や西宮市などの市長退職金とも比較されましたが、いずれも地域の規模に応じてある程度の格差が見られました。
稲村氏の増額後の退職金は、神戸市長よりも控えめではあるものの、同規模の都市よりはやや高めの水準にあります。
このため、「増額は妥当であるが、特に高額でもない」という意見も一部で聞かれます。
他都市での減額の動き
一方で、最近の傾向として、自治体の首長報酬や退職金を見直す動きが全国的に広がっていることも無視できません。
特に、経済的な困難を抱える自治体では、首長の報酬や退職金の削減を行うことで市民の信頼を得ようとする例が増えています。
大阪府では市長報酬や退職金が大幅に削減された事例もあり、これが「市民に寄り添う行政」として評価されています。
このような動きがある中で、尼崎市が退職金増額を選択したことは、他自治体の市民から見ても「時代に逆行している」との批判が生じる理由となっています。
特に、財政の厳しい市町村では、首長自身が率先して報酬を削減することで市民に共感を呼ぶケースもあるため、稲村氏の増額決定は市民感情にそぐわないという意見も出ています。
適正な退職金額とは
退職金の適正な額は、自治体の財政状況や市長の職務内容、市民の生活水準など多くの要素が関わります。
稲村氏の増額決定が報酬審議会の審議を経て行われたものであっても、尼崎市の現状においてそれが市民にとって適正であったかどうかは簡単には評価できません。
むしろ、他の自治体の動きや市民感情を踏まえたうえで、「透明性のある説明」と「適正な額の決定」が今後の市政にとって重要となるでしょう。
まとめ:今後求められる説明責任
稲村和美さんによる退職金増額問題は、市民サービス削減とのバランスや透明性について多くの疑問が残っています。
彼女自身はこの決定に直接関与していないとされていますが、その結果として高額な退職金を受け取ったことについては説明責任が求められています。
今後も、この問題は兵庫県知事選挙や地域政治において重要な争点となり続けるでしょう。
読者のみなさんも、この問題についてさらに関心を持ち、自分自身で情報収集し判断することが大切です。