プレミア12は、2015年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が創設した国際大会で、世界ランク上位12カ国が参加して競われます。
毎回11月に行われることから、MLBや日本プロ野球(NPB)のシーズンが終わった後に開催され、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)とは異なる大会として位置づけられています。
WBCはMLB主導で行われ、シーズン途中に開催されるため、より多くのスター選手が参加しやすいという点でプレミア12とは異なります。
しかし、プレミア12は「シーズン後の開催」「主力選手の辞退者が続出する」という批判もあり、「大会の意義が薄いのでは」と疑問視する声も少なくありません。
この記事では、こうした懸念を踏まえつつ、プレミア12が設立された背景とその意義について解説します。
大会の存在理由を探ることで、野球の国際大会としての価値を再評価します。
Contents
プレミア12とWBCの主な違い
主催者と開催時期の違い
プレミア12は、WBSC主催で、2023年には3回目の大会が行われました。
一方、WBCは、2006年からMLB主催で行われる国際大会で、プレミア12のようなオフシーズンではなくシーズン中の3月頃に開催されます。
このため、シーズン直前であるWBCのほうがメジャーリーガーを中心に多くのスター選手が参加しやすく、メディアからも注目が集まります。
参加国数と選手構成の違い
プレミア12は、これまで野球に注目が集まらなかった国々での認知度向上を目指しています。
例えば、WBSCが「プレミア12は国際野球における新たなマーケットの開拓を促進する大会」として位置付けている通り、アジアや中南米など特定の地域に偏っていた野球人気を、他の地域へも広げる意図があるのです。
また、大会を通じて野球のルールやプレイスタイルが紹介されることで、地元ファンの増加や競技人口の拡大が期待されています。
プレミア12は、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する国際野球大会で、世界ランキング上位12カ国が参加します。
4年に一度、WBCと交互に開催されるこの大会は、2015年に第1回が行われました。
WBCとは異なり、プレミア12は「野球国力」を競う大会として位置づけられています1。
項目 | プレミア12 | WBC |
---|---|---|
主催者 | WBSC(世界野球ソフトボール連盟) | MLB(メジャーリーグ機構) |
出場国数 | 12カ国 | 約20カ国 |
開催時期 | 11月(シーズン終了後) | 3月(シーズン前) |
選手層 | 各国のトップ選手が揃わないことも多い | メジャーリーガーを含むトップ選手が多く参加 |
WBCはMLBが主催しており、メジャーリーガーの参加が多く、世界中の注目を集めます。
一方で、プレミア12はシーズン終了後の11月に開催されるため、特にMLB選手の辞退が目立ちます。
その結果、「1.5軍」や「2軍」レベルの選手が出場することもあり、大会の価値に疑問を持つ声も少なくありません。
野球国力の競争
プレミア12は単なるトップチーム同士の戦いではなく、「野球国力」を競う大会です。
WBSC世界ランキングは、各世代(U-12, U-15, U-18, U-23など)の成績を総合的に評価して算出されます。
そのため、この大会では各国の総合的な野球力が問われます。
これはWBCとは異なる視点であり、若手選手や次世代スターたちが活躍する場ともなっています。
国際的な普及活動
WBSCは野球とソフトボールを世界的に普及させることを目的としています。
プレミア12は、その一環として、特にMLB以外の地域で野球を盛り上げる役割を果たしています。
例えば、中南米やアジア諸国ではこの大会を通じて野球人気が高まり、多くの若手選手が注目されています。
オリンピック復帰への布石
プレミア12は、オリンピック競技としての野球復帰にも関連しています。
2019年大会では東京オリンピック予選も兼ねており、この大会で好成績を収めたチームが五輪出場権を獲得しました。
2028年ロサンゼルス五輪でも追加競技として野球・ソフトボールが採用される予定であり、その準備としてもプレミア12は重要な役割を担っています。
若手選手の育成と新たな才能の発掘
プレミア12は、各国の若手選手や控え選手にとって、国際大会での経験を積む絶好の機会です。
多くのトップ選手が辞退するため、普段は控えに回っている若手選手が代表として出場するケースが増え、彼らの成長や能力を示す場となっています。
この点において、プレミア12は「将来のスター選手を発掘する大会」としての役割を担っています。
例えば、日本でも若手選手がこの大会で活躍したことがきっかけで一躍注目を浴び、プロリーグでの評価が上がった例がいくつか見られます。
各国の参加状況と選手選考の現状
プレミア12では、メジャーリーガーの参加が難しく、結果として多くのチームが若手選手や控え選手を中心に構成されています。
特にMLB所属の選手はシーズン直後の契約の影響やケガのリスクから、出場を辞退するケースが多くなっています。
たとえば、日本チームでは、NPBのシーズン終了後に国内トップ選手が参加し、試合を重ねてチーム力を高める方針が取られていますが、MLB選手の参加がないため、ベストメンバーではないことが多いのが実情です。
メジャーリーガーの参加状況
MLBの契約により、プレミア12への出場を辞退する選手は多く、各国ともに「1.5軍」や「2軍」レベルの構成で参加する傾向があります。
これは日本だけでなく、アメリカや韓国も同様で、国内リーグ所属の若手や控え選手を多く登用しています。
しかしその一方で、こうした大会が若手選手にとって国際大会での経験を積む場となるため、各国が育成や将来を見据えた戦略的な選手選考を行うことにもつながっています。
各国の代表チームの構成と戦略
プレミア12の参加チームは、MLBが関与しないため、リーグごとの選手供給の制限が少なく、国によって独自の戦略が見られます。
たとえば、アメリカはMLBシーズン終了後の疲労や契約状況を考慮し、メジャーリーガーではなくマイナーリーグの選手や若手を中心としたチーム編成で出場することが多いです。
また、韓国やメキシコなども、国内リーグでの成績が良好な選手や将来性のある選手を選ぶなど、若手中心の編成が主流です。
このように、各国の参加状況には国ごとの事情が色濃く反映されていますが、それぞれの国で「国際大会での経験」を通じて選手が成長する機会として位置づけられています。
この点で、プレミア12はただの「大会」としてだけでなく、次世代を担う選手たちが国際舞台で活躍し、自己をアピールする重要な場としての意義があると言えるでしょう。
プレミア12の課題と今後の展望
プレミア12には大きな意義がある一方で、いくつかの課題も抱えています。
その一つが「大会の認知度」です。WBCと比べると注目度が低く、ファンやメディアの関心が十分に高まっていないことが問題とされています。
これは大会の頻度や開催時期、出場選手の質が影響していると考えられます。
特にシーズン終了後の疲労や選手契約の問題が重なるため、主力選手の参加が難しくなり、結果としてファンの期待に応えきれていない部分があります。
大会の認知度向上と参加選手の質の向上
プレミア12がWBCに匹敵する注目度を得るためには、参加選手の質を向上させ、観客にとってより魅力的な大会にすることが重要です。
これには、MLBやNPB、韓国リーグなどの主要リーグと協力し、選手が参加しやすいスケジュール調整を行うことが必要とされています。
また、WBSCが大会のプロモーションを強化し、テレビやインターネットを通じて積極的に配信することも、観客の関心を引きつけるために効果的です。
野球界全体への影響と期待される成果
プレミア12のような大会は、将来的に野球を五輪競技として定着させるための一つの手段としても位置づけられています。
WBSCは、野球が五輪の正式種目として復帰する可能性を視野に入れており、プレミア12をそのための試金石としています。
プレミア12が盛り上がりを見せ、国際的な注目を集めることができれば、五輪における野球の復活を支援する大きな材料となります。
さらに、この大会が成功することで、野球が普及していない地域にも拡大する可能性があり、競技人口の増加や新たなスター選手の登場も期待されています。
プレミア12は単なる「オフシーズンの大会」ではなく、国際的な野球の発展に寄与する長期的なプロジェクトとしての価値を持っているのです。
まとめ
プレミア12は確かにWBCほど華やかな大会ではなく、一部から批判もあります。
しかし、「野球国力」を競うという独自の意義や、若手選手育成、そしてオリンピックとの連携など、多くの目的があります。
この大会を通じて新たな才能が発掘されることや、世界中で野球人気が高まることを考えると、その存在意義は十分にあると言えるでしょう。