【ペンギンの生き残りに黄信号】『現代の気候変動に素早く適応できるか疑問』についてTwitterの反応
<進化速度が鳥で最も遅かった、前例のない大規模研究で明らかに>
南極の雪山を滑り降り、極寒の海を元気に泳ぐ。
ペンギンは周囲の環境に完璧に適応しているように見える。
しかし、このカリスマ的な鳥は最初から飛べない海鳥だったわけではない。
飛ぶ鳥から泳ぐ鳥へと進化するにあたって、まったくと言っていいほど新しい技術、体形、機能を手に入れたのだ。
この進化をかつてない方法で描き出し、気候がペンギンの運命をどのように変えたかを検証した成果が、7月19日付で学術誌「Nature Communications」に発表された。
化石記録とゲノムデータを組み合わせた、前例のない規模の研究だ。
「ペンギンは最も楽しい進化の産物です」と、米コネティカット州グリニッジにあるブルース博物館の鳥類古生物学者で、論文の著者の一人であるダニエル・セプカ氏は語る。
「彼らは祖先と全く異なるボディプラン(体の基本的な構造)とライフスタイルを適合させてきました」
論文によれば、約6600万年前の白亜紀と古第三紀の間に起きた大量絶滅の後、初期のペンギンは南半球のあちこちにできたニッチ(生態的地位)に驚くほど素早く適応したという。
鳥類以外の恐竜が絶滅し、ほかの動物に繁栄の余地が生まれたため、ペンギンは南半球のさまざまな気候帯、生物群系に入り込んだ。
ただし、この研究は同時に、ペンギンは鳥類で最も進化の速度が遅いことも明らかにした。
つまり、大量絶滅後、海洋生物になってから、遺伝子の変異の速度が著しく低下している。
そのため、現代の猛烈なスピードの気候変動に素早く適応できるかどうか疑問だ、と研究チームは述べている。
ブラジル、ニュージーランド、南アフリカなど、多様な環境に暮らすペンギン18種ほどのうち、半数以上が国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(endangered)または危急種(vulnerable)に指定されている。
「進化の速度が落ちているせいで、現代のペンギンは古代のペンギンに比べて、急激な環境変化を生き延びる能力が不足しているのかもしれません」と、ニュージーランド、カンタベリー大学の鳥類古生物学者バネッサ・デ・ピエトリ氏は話す。デ・ピエトリ氏は今回の研究に参加していない。
「ペンギンは特殊化し、自らを窮地に追い込んでしまったのでしょうか? おそらく、そうなのでしょう」
<水中生活に適応、進化>
ペンギンの進化に関するこれまでの研究は、全ペンギン種の約4分の3がすでに絶滅しており、化石記録でしか語られていなかった。
今回のように、完全な化石記録に加えて、現生種、最近絶滅した種すべてのゲノムを組み合わせた研究は前例がない。
ニュージーランド、オタゴ大学の古生物学者ニック・ローレンス氏は、「ペンギンの進化を理解するための素晴らしいアプローチです」と第三者の立場で評価する。
研究チームは化石記録とゲノムという2つの巨大なデータセットを組み合わせて、ペンギンの系統樹を精緻化。
ペンギンが多様になった時代を特定し、個体数の変化を描き出し、水中生活への移行につながった遺伝子を突き止めた。
「本当の意味で、全体像が見えてきました」とセプカ氏は振り返る。
デ・ピエトリ氏によれば、ペンギンの直接の祖先は、化石がないため、まだ不明だという。謎に包まれたその子孫、つまり最初のペンギンが現れたのはおそらく6000万年以上前、アホウドリやミズナギドリに似た飛ぶ鳥のグループから分岐したと思われる。
ペンギンのゲノムを解析した結果、泳ぐための硬いフリッパー(翼)と防水性の羽毛、体温を維持する厚い皮膚と脂肪、潜水して水中でものを見る機能と体内に酸素を蓄える力を獲得した経緯が明らかになった。
これらの適応についてはすでに知られていたが、現存するペンギンのゲノムをすべて比較することで、研究チームは適応の原因となった遺伝子を特定できた。
また、ゲノムと化石記録を結び付けることで、その遺伝子とそれぞれの種が現れた時期を推定できた。そして最後に、すべてを気候と結び付けた。
(出典 d26lmfi5ymz934.cloudfront.net)
<気候変動に応じて多様化>
ペンギンの進化は、最初の急速な適応以降、徐々に減速していった(ちなみにキツツキの進化は鳥で最速の部類に入るが、その理由は謎のままだ)。
海洋環境に合わせて進化したペンギンはその後、繰り返される気候変動に適応しなければならなかった。
そして200万年余り前、最終氷期が始まったころ、爆発的に種が多様化した。
氷床が拡大し、環境が変化すると、ペンギンたちは移動し、多くの場合、ほかのグループから完全に切り離された。氷に隔てられ、数十万年をかけて、ペンギンは現存する多様な種へと進化した。
過去の研究でもこのような仮説が提示されていたが、今回ゲノムデータと化石記録を組み合わせたおかげで、最も強力な証拠が生まれた。
<ペンギンの運命は人類と共に>
ペンギンは過去の気候変動に適応しつつ進化を遂げてきた。
しかし、現在の気候変動は桁違いにペースが速いため、ペンギンは今、これまで経験したことがない進化の課題を突き付けられている。
研究チームは、ペンギンがこの難局を乗り越えられないのではないかと考えている。
「多くのペンギンは気候変動の影響が極めて大きく出ている地域に暮らしています」とセプカ氏は語る。特に、ヒゲペンギンをはじめとする南極の種が危険にさらされている。南極大陸は1990年代前半から約3兆トンの氷を失っている。特定の島に生息するペンギンも「ほかに行き場がない」ため、弱い立場にあるとセプカ氏は述べている。
「ペンギンの運命は人類の運命と強力に結び付いていると思います。本当に」
「この研究は、ペンギンの歴史を通じて、種の多様化が主要な気候変動とどのように相関しているかをゲノムの文脈で実にうまく証明しています」とデ・ピエトリ氏は話す。
出典:ナショナル ジオグラフィック日本版
ペンギンの生き残りに黄信号、「現代の気候変動に素早く適応できるか疑問」 …進化速度が鳥で最も遅かった、前例のない大規模研究で明らかに 南極の雪山を滑り降り、極寒の海を元気に泳ぐ。ペンギンは周囲の環境に完璧に適応しているよう… (出典:ナショナル ジオグラフィック日本版) |
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