日本がグローバル化できない「根本的な原因」とは? 今の教育システムに“足りないもの”とは・・・
何がいけなかったのか?
理由はいくつもあるだろうが、その中でもシンプルかつ明らかな原因がある。それはグローバル化の柱のひとつ「国境を越えたヒトの移動」ができなかったからだ。単純労働のための海外人材の雇用は増えたものの、日本のビジネスに付加価値を与えてくれるような高度人材を世界から募る日本企業はまれだ。
一方で、MicrosoftやGoogleのCEOにインド人が就任するほど米国では人材のグローバル化が進んでいる。もちろん米国人が逆に外国に出て企業や学校で活躍するケースも多くある。それは米国のみならず世界中の先進国で起きている現象だ。だが残念なことに、日本人が海外企業でその能力を発揮するケースは多くない。
少子高齢化に伴う人口減少により、国内市場は今後縮小の一途をたどる。海外市場に活路を見出すより他ない状況の中、グローバルに通用する人材も企業もなかなか輩出できないのが今の日本だ。
そうなった根本的な原因の一つが日本の教育システムにあると考える。日本の教育は知識習得と自己鍛錬には効果的だが、情報化とグローバル化が進み、将来の予測が難しい現代社会にマッチしているとは言い難い。
グローバル化に必要な「4つのC」
では、どのような教育が必要なのか? 全米教育協会は2014年にその回答として「4つのC」を提案した。それは、以下の4つの伸ばす教育だ。
〈(1) Communication(コミュニケーション)
(2) Collaboration(協働)
(3) Critical Thinking(批判的思考)
(4) Creativity(創造性)〉
このうち誤解されやすい(3)について少し解説をしたい。
批判的思考とは、言われていること(議論)を鵜呑みにせず、「なぜか?」という問いを繰り返し、議論の構造を明らかにする手法だ。決して反対の立場に立って考えることではない。
例えば、「戦争はすべきではない」という議論に「なぜ戦争すべきではないのか?」と問うてみる。その答えが「多くの人が自らの意思に反して死ぬから」であれば、「では、多くの人が死ぬことがなぜいけないのか?」と問う。これを繰り返し、問いを深めていく。やがて問いは哲学的となり、その答えは価値観や信念を反映するものとなる。議論の前提が明らかになるのだ。批判的思考についてのより詳しい説明は以下のコラムをご参照いただきたい。
国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)ー2(クリティカルシンキング理論編) https://note.com/motokiwatabe/n/n4ae0970a7027
最近の海外での教育は、4Ⅽを謳っていなくとも、それに準ずる目標を掲げる学校が多い。例えば国際バカロレア(IB)では、理想の学習者像として
(1)探究する人、(2)知識のある人、(3)考える人、(4)コミュニケーションができる人、(5)信念をもつ人、(6)心を開く人、(7)思いやりのある人、(8)挑戦する人、(9)バランスのとれた人、(10)振り返りのできる人、を挙げている。
これらが4つのⅭをほぼカバーしていることはおわかりいただけるだろう。つまり世界の教育の多くは、この方向にシフトしている。現在では、既存の考えや知識、価値観やキャリアパスなどが、急速に変わり、5年前にコロナを予測できなかったように、不確実性が高くなっているのが理由だ。このように不確実性の高い状況は「VUCA」と呼ばれ、近年のキーワードとなっている。4ⅭやIB学習者像は、そんな正解のわからない、予測のしにくい状況を乗り越えるための能力として認識されている。
座学よりも実践で鍛えるべき能力
海外では具体的にはどのような教育をしているのか。重要なことは、4つのⅭは座学よりも実践で鍛えるべき能力だという点だ。したがって、知識を効果的に他人に伝える、マウントとりではなく発展的議論をする、グループで成果を出すような課題に取り組ませるようなことを小学生のレベルから行っている。具体例については下記のコラムを参照いただきたい。
マレーシアの小1の宿題がグローバル過ぎてワロタw「負け組組織の大人」にならないための練習問題 https://diamond.jp/articles/-/59159
国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由 https://note.com/motokiwatabe/n/n889d62a761f7
一方日本では、先生が4Ⅽの重要さをわかっていても、それを効果的に教えられない。その元凶は、知識量を偏重した大学受験システムであり、大学ブランドによる仕分けに基づいた企業の新卒一括採用システムにある。簡単に言えば、受験に役に立つような教え方しかしないのだ。大学においても、ほぼ大学名で学生の就職が決まってしまうため、4Ⅽを鍛える大学教育システムが育たない。結果として、4Ⅽを鍛えるノウハウを持つ教育者の数が圧倒的に少ないのも問題だ。だからといって、子供に海外留学をさせるのは簡単ではない。仕事や経済的理由でそれができない親が大半だろう。
子供に「意思決定」をさせる体験が大事
では、今の日本の親たちはどうすればいいのだろうか。ここでは親子で4Ⅽに取り組む例を紹介したい。
基本的な考え方は、(1)不確実な状況で、(2)いろいろな意思決定をしなくてはならない、(3)その意思決定はグループでのコミュニケーションが必要、という環境を作ることだ。
最も手軽にそれを作れるのは、野外でのキャンプだ。どこに泊まるか、どこにテントを張るか、食事はどうするか、天候の変化にどう対応するか、といった自然環境の不確実性に対して、様々な意思決定が要求される。そこでは、どんな意思決定の優先順位が高いか、というレベルから考えなくてはならないし、そのための議論もしなくてはならない。
それを親子で実践する。その時に重要なのは、決定のイニシアティブを子供に取らせることだ。子供の考えが明らかに間違っていても、それを頭から否定するのではなく、あくまで自分の代替案を提案するに留める。大きなダメージが残らないようなら失敗させても良い。その代わり、失敗の分析と振り返りを(決して叱らずに)させる。子供はその体験を通して、意思決定の大切さや面白さを体得するはずだ。そしてより良い決定をするには、批判的思考とコミュニケーションが必要とし、実現するにはコラボレーションが必須で、新しいアイディアを創造することもできると理解するだろう。
このような経験をできるだけたくさん子供にさせることが重要だ。上記の3つの条件を満たせばなんでもよい。例えば、冷蔵庫にある材料でどれだけ美味しい夕食が作れるか、子供と一緒に考えるなど、工夫次第でいろいろとできるはずだ。
実はこれは大人である私たちが4Ⅽを身に着ける貴重なチャンスでもある。日本的教育システムにどっぷりと浸かってきた私たちが、その呪縛から解き放たれるための訓練として有効だ。私たち自身の4Cが鍛えられるとき、子供たちの4Ⅽもまた飛躍的に伸びることだろう。
渡部幹(わたべ・もとき)
1968年、北海道生まれ。北海道大学卒業。UCLA大学院社会学研究科博士課程修了、Ph.D.(社会学)。京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、2013年よりマレーシアに移住。現在サンウェイ大学サンウェイビジネススクール教授、同スクール経営学部学部長。専門は、社会心理学、組織行動学、社会神経科学。2008年に出版した『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(講談社現代新書)は29万部のベストセラーとなっている。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。
(渡部 幹/ノンフィクション出版)
このニュースへのネットの反応
教育システム以前に少子化が問題じゃね
一方的なルール造りで勝手にルールを造り変えるのがグローバリズムの本質。その結果、グローバリズムは多様性を破壊して不平等を加速していますが?
『先進国中で日本だけが唯一後退しているのは周知のとおりだ。』 ナイスジョーク
グローバルと言う画一的な世界で人々は本当に幸せになれるのか?少子高齢化社会ならそれに比例させて自分達の世界を小さくする事の何が悪い?狭くても身近な人達とゆっくりのんびり暮らせる世界の方が幸せを感じられると俺は思うがね。
そもそもおまえらの言うグローバル化って自国文化破壊と他国への迎合のことだろ。国際社会と国際市場の中に入っていくことを指すなら問題なかったのに、海外と違う=悪みたいなものの考え方するからそんなこと思うんだよアホらしい
グローバル化をなんだと思ってるのか・・・商売や人材が自由に移動出来るだけだぞ。その結果経済が活発になるってだけ。全部の国が同じことしたら移動する意味がなくなるからこの記事は反グローバル。
国境があるから国体が守られるんだよ特に回りに*国家しかない日本にゃそこは生命線だeuなんて地続きだからしにかけとるやないか
グローバル化は歴史的或いは文化的背景を無視して「◯◯国(或いは××国)の制度だけが正しいもの。我が国もこの制度に変えましょう」というもので、普段盛んに言われている「多様性」とは正反対。
島国という点で難しいんだが、日本の場合それに輪をかけて英語圏との接触からの期間が短いんだよね。 南北アメリカは現在の国家体ベースがヨーロッパ系だし、ユーラシア・アフリカは元々地続き、オーストラリアは流刑地という経緯があるし南アジア諸島は占領・植民地。 基礎接点が江戸時代の出島での細々とした交流で、WW2後からの、しかも国家継続での本格スタートというね。
グローバル化しなきゃいけないかのような言い分だな、メリットもあるがデメリットもあるぞ? 当たり前のことだが。
日本はグローバル化してるほうだろ。食は大きく影響を受けてるし、技術は影響を与えている。他国に迎合して自国の文化を蔑ろにするのはグローバル化とは言わないのよ。
なんかうだうだ言ってるけど、単純に英語話せないからだよ。先進国なら海外出張で世界中を回されるし、途上国でも出稼ぎで海外渡航したりする。英語が話せりゃ世界中で働ける、それだけ。
【この30年間各国で実践され世界経済は発展を遂げた】【日本だけが唯一後退】 ← なぜいつも判で押したように「30年」なのか分かるか?1990年を計測開始のスタートラインにした時の、各国との比較した場合に限り、その「伸び」の「率」が上がってないだけだ。各国でピークは違うのに、日本だけがピークの西暦から図り、しかも「伸びの率」は比較すれば日本が低いのは当たり前
【MicrosoftやGoogleのCEOにインド人が就任するほど米国では人材のグローバル化が進んでいる】 ←←← ■なに言ってんだこいつ?人種と国籍も区別できないのか?そのインド人は「帰化したアメリカ国籍」だろ。人種の話でしかないのになぜグローバルなんだ?お前の言ってる「海外から」とは全然違うぞ
「戦争はすべきではない」 ← なぜ急に戦争が出て来るのか?その思考がお察し
文春ごときが
「北海道大学 京都大学助教、早稲田大学准教授」 ← なんだゴミか。赤→赤→赤
あとな?グローバルの意味ぐらい理解してから乱用しろ。インターナショナルの言い換え語じゃねーぞ。インターナショナルの「反対語」だぞ
文化や企業などの組織を通じてグローバル展開できればいいんじゃないんすかね?現状できてないとは思わないし選択の自由奪ってまでやることなの?参画すれば活躍できるみたいな論法で胡散臭いです。
グローバル化?知らない言葉ですねえ、世界のホワイトナイズのこと言ってます?
こんな程度でよく教授なんて語ってられんなぁ
日本ほど宗教がグローバルな国知らない
日本がグローバル化できないって例えばどんなことが? 仮にもG7メンバーに入ってて多国籍企業も沢山あるのに。
海外の企業で活躍している人らより、日本から出向したりで活躍してる人が多いからなぁ。今でもイギリスだかの電車の整備システム構築とかやっている企業もあれば、農耕システムの手ほどきとかしたりと目だったり目立たなかったりの活躍も多いから・・・
日本が世界から遅れてしまった原因は教育にあるのかもしれませんね。知識よりも優先して教える事があるというのはその通りに思います。
グローバリズムは間違った思想であるから採用すべきではない。
そもそも日本が世界に学ぶことはあんまりない、文明を支える技術の根底を支配し、世界の金融を支配し、世界の物流を支配し、世界の軍事を支配している。日本語が世界標準になる単語も増え、エンタメも影響力を高めている。学ぶべきことといえば凶悪犯にノータイムで鉛弾をぶち込むことことくらいだ
グローバル化はアメリカに都合のいい侵略の一環でしかないからな。まぁ今更手遅れではあるが
企業が扱いやすそうな「コミュニケーション能力」のある人材ばっかり集めようとするせいじゃね?営業には向いてるかもしれないが、営業だけで企業は強くなれない。
若い日本人を海外に誘き出してハニトラにかけて、人生を乗っ取ってくる可能性が高いので優秀な人は出来るだけ外に出さない方が良いと思いますw 大切にして欲しいw
スパイ防止法もなければ国軍も軍法もないからね。さっさとこういう売国テロ*思想を垂れ流す曲学阿世系スパイは鉛弾で皆○しにできるよう法整備するべき。
グローバル化の見直しが進むこのご時世に、無神経にこの言葉を使う記事のセンスが悪すぎる。
議員周りをグローバル化しようか。まずは欧米に倣って「帰化1世の国会議員禁止」からかな。あとは「3代遡っての国籍の公表」。移民だなんだと言われても日本の方が議員周りは緩いぞ。というか、教育も経営も日本のを視察したり参考にしたりする国があるのに、日本自身がそれを壊してるっていうギャグ。
違うだろ。グローバル化出来ないのは英会話が出来ないから。入国審査でPurposeという単語使われて「は?」とか言ってるんじゃどうしようもない。
類似記事? 日本の東アジア最劣等国化を防げ 私立中授業料助成が大切な理由 :https://news.nicovideo.jp/watch/nw11999707
ヨーロッパは逆にグローバル化を止めようという動きになってるってTVで言ってたけどな~
グローバル化した結果がいまの衰退した日本じゃん
無闇にグローバル化とかやらを推し進めなくても良いのでは? 元々日本は内需の国なんだし。
グローバル化でむしろ日本国内の貧困格差が拡大してるんだよ。まあ経済に寄生してるポジションの大学教授には理解できないだろうがね。
グローバル化という名の帝国主義・ブロック経済
学校でなぜこうなのか?というと「文句を言うな!」と怒られる。教師自身がなぜ?と問われることに慣れてない。そこを変えないと難しいのではないか。
少なくともここにいるやつらは批判的思考を持ち合わせてるみたいだぞよかったな
10年前ならまだしも、世界中の先進国で固有文化の衰退や移民との軋轢が深まってる2023年にこんな記事を出しても、納得できるのはバカだけでっせ笑
グローバル化の妨げになってる最たる理由はいらんところまで取り入れさせようって魂胆のゴリ押しが多すぎるからだろう。いいところは取り入れるべきだけど海外デハーって言ってる人間がまず胡散臭い所の存在だし、実際その内容もマトモなものを見たことなんてほとんどないぞ。教育以前に詐欺師が多すぎるんだわ。
日本人が外に出て行かないのは日本国内で食っていけるから。現に過去の不況時には多くの日本人移民が外国へ旅立っていった
そりゃ初等教育から大学までオリジナル言語(日本語)で完結するからな。
グローバル化するにしても日本の良い所や芯の部分はしっかりと保持しないと、リア充の真似事をするキョロ充と変わらんよ。
多様性の印象悪くなって新しい標語作ったのかw
グローバル化のメリットがそんなにあるとは思わないけれど、政治家や官僚の思考はもうちょっとグローバル化してもいいかなと思う。
グローバルの代表格であるゲーム分野にちゃんと向き合わないからしなくて良いまである。バースの1分野であるメタでグローバル化を図ったがどうなった?