パリ2024オリンピックの柔道男子90kg級決勝で、日本代表の村尾三四郎選手がジョージアのラシャ・ベカウリ選手に敗れ、銀メダルを獲得しました。
しかし、この試合の最後の判定が物議を醸し、多くのファンや専門家が疑問を抱きました。
特に、村尾選手の内股がビデオ判定されなかった一方で、ベカウリ選手の返し技がビデオ判定で技有りと認められた点が注目されています。
この記事では、この疑惑の判定について詳しく探ります。
Contents
柔道男子90kg級決勝試合の概要
村尾選手は、試合開始から1分で谷落の技有りを先に奪いましたが、2分30秒過ぎにベカウリ選手に掬投で技有りを許しました。
試合は互角の展開となり、ゴールデンスコアに突入する直前の4秒前に、ビデオ判定によりベカウリ選手の小内刈が認められ、最終的に村尾選手は敗北しました。
この際、なぜ村尾選手の内股がビデオ判定の対象とされなかったのかについて疑問が残っています。
ビデオ判定の問題点
国際柔道連盟(IJF)は、試合後の声明で判定の際の基準について言及しました。
ビデオ判定は通常、明確なミスを修正するために使用されますが、この試合では内股が明確な得点技と認められなかったため、ビデオ判定の対象から外されました。
一方で、返し技は明確な得点技として認定されましたが、そのプロセスには疑問の声が上がっています。
ビデオ判定は、柔道の試合において重要な役割を果たします。特に、試合の決定的な瞬間や疑惑のある技については、ビデオ判定が行われます。
しかし、なぜ村尾選手の内股はビデオ判定されなかったのでしょうか?
1. 主審の判断
まず、試合中の主審の判断が大きな影響を与えます。
主審が技を「有効」と判断しない限り、ビデオ判定に移行することはありません。
村尾選手の内股が主審により技有りと認められなかったため、ビデオ判定に移行しなかった可能性があります。
2. ビデオ判定の基準
ビデオ判定は、明確なエビデンスがある場合にのみ行われます。
村尾選手の内股が技有りと認められるためには、明確な投げ技の成立が必要です。
もし、主審や副審が内股の技が不完全だと判断した場合、ビデオ判定に移行する必要がないと判断されることがあります。
3. 試合の流れとタイミング
試合の流れやタイミングもビデオ判定に影響を与える要因です。
試合が進行中であり、他の技が連続して行われる場合、ビデオ判定のタイミングを逃すことがあります。
村尾選手の内股が試合の流れの中で見逃された可能性も考えられます。
ビデオ判定の基準はどのようなものか?
柔道におけるビデオ判定の基準は、試合の公正性を保つために設けられたもので、特定の状況や技に対して適用されます。
以下に、ビデオ判定の基準について詳しく説明します。
ジュリー制度の役割
ビデオ判定はジュリーと呼ばれる審判委員が大きく関与します。
ジュリーは試合の進行を監督し、主審や副審の判定を確認する役割を持っています。
ジュリー制度は1994年に導入され、2013年からはビデオチェックも行うようになりました。
ビデオ判定が行われる状況
ビデオ判定は以下のような状況で行われます:
- 技の効果:一本、技有りなどの技の効果を判定する際に、ビデオ判定が使用されます。
- 消極的な柔道:消極的な柔道に対する罰則を与える際にもビデオ判定が適用されます。
- 試合の決定的瞬間:試合の勝敗を決定するような重要な瞬間や疑惑のある技についてもビデオ判定が行われます。
ビデオ判定の手順
- 主審の判断:まず主審が技を「有効」と判断しない限り、ビデオ判定に移行することはありません。主審が技の成立を認めた場合にのみ、ジュリーがビデオ判定を行います。
- ジュリーの確認:ジュリーはビデオ映像を確認し、技の効果や反則の有無を判断します。ジュリーが判定の訂正が妥当であると判断した場合、副審と協議して最終決定を下します。
- 判定の訂正:ジュリーが判定を訂正する場合、その理由を明確にし、試合進行に反映させます。コーチは判定の変更に抗議する権限はありませんが、ジュリーテーブルに出向いて変更がなされた理由を確認することは可能です。
ビデオ判定の基準の明文化
ビデオ判定の基準はルールによって明文化されていますが、技やアクションそのものは個別に指定されておらず、何に該当するかは審判の判断に委ねられています。
例えば、「背負い投げの一本」や「内股透かしの一本」といった具体的な技単位での明確な基準は定められていません。
柔道のビデオ判定は、試合の公正性を保つために重要な役割を果たしています。
ジュリー制度の導入により、誤審の減少が期待されますが、判定の基準が曖昧な場合や主審の判断が優先される状況もあるため、完全な公正性を保つためにはさらなる改善が必要です。
ビデオ判定の基準を明確にし、審判の判断が一貫して行われることが求められます。
国際柔道連盟の声明と今後の対応
IJFは、今回のような判定に対する透明性を向上させるため、ルールの見直しを検討していると発表しました。
また、今後はビデオ判定の適用範囲を拡大し、より公正な判定を行うことを目指すとしています。
まとめ
スポーツにおける公正性は競技の信頼性に直結します。
今回のような疑惑の判定が起こることは、選手やファンにとって大きな不満の原因となります。
今後、ルールや判定の透明性を向上させるための対策が講じられることが期待されます。
村尾三四郎選手の内股がビデオ判定されなかった理由は、主審の判断、ビデオ判定の基準、試合の流れとタイミングなど、複数の要因が絡み合っていると考えられます。
柔道の試合においては、瞬間的な判断が重要であり、その中での判定の難しさが浮き彫りになりました。
今後、柔道の判定基準やビデオ判定の運用について、更なる議論が求められるでしょう。
参考文献
- パリ2024オリンピック公式サイト[5][6]
- Kyodo Newsによる試合レポート[7]