『なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか』【骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ】についてTwitterの反応
(出典 www.rd.com)

『なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか』の記事の要約

人魚なのに尾が二股に分かれている。

上半身が裸で胸を露出し、二股の尾を自ら持ち上げて股を開く。

だが本作のような表現は歴史を通して一般的ではなく*3、古代ギリシアにおいてセイレーンは半人半獣の怪物として描かれるのが普通であった。

実のところ、古代ギリシアにおけるセイレーンとは、人魚ではなく人面鳥*4であったのだ。

今でこそセイレーン=人魚の図式が刷り込まれているので人面鳥というのは違和感があるが、セイレーンの特徴を考えたらこっちの方がしっくりくる。

セイレーンは人魚でなかったが、人魚そのものは古来から存在する。

最古の人魚としては古代バビロニアの魚神オアンネスが挙げられる。

後にヴィーナスのシンボルであるホタテ貝が転用されて人魚のブラになったことを考えると、アタルガティスは現代人魚の祖先の一人と言えるだろう。

アフロディーテやヴィーナスは海との繋がりがあるとはいえ、魚の尾は持たなかった。

ちなみにスタバのセイレーンは王冠を被っているが、アレはトリトン由来のものである。

トリトンは地中海沿岸の諸都市の創始者とみなされているため、王冠を戴くことになった。

このように古代においては素材は揃っていたが、人魚とセイレーンは別物であった。

古代地中海世界においては、半人半獣は悪ではない。



(出典 cdn-ak.f.st-hatena.com)

古代の文芸がキリスト教的な意味付けを与えられて再解釈されていくのだ。

禁欲を美徳とした男性優位なキリスト教会にとって、男性を誘惑して破滅に導く女性であるセイレーンは、まさに「淫蕩」のアレゴリーにふさわしい。

5世紀にアイルランドで布教を行った聖パトリキウスは、在来信仰を否定しなかった。

ケルト人は水域への信仰があり、泉や河川を神聖な場所として崇めていた。

そんなアイルランドのキリスト教は異教を取り込む柔軟性がある一方で、自らに対しては厳しさを向けていた。

6世紀末、そんな修羅の国から聖コルンバヌスが12人の弟子を引き連れて大陸にやってきた。

この時、海を渡ったのは修道士だけではなかった。

まだキリスト教が迫害されていた紀元2世紀、現トルコのエフェソスにハドリアヌス神殿が建造された。

アカンサスの装飾はローマが滅びて途絶えたかに思えたが、ロマネスク様式で復活を遂げる。

「肉欲」や「淫蕩」につながる「性」はキリスト教的に悪であるが、一方で「性」は「再生」「豊穣」、そして「子孫繁栄」にも結びつく。



(出典 www.fineprintart.com)

性的な外見であり、豊穣神アタルガティスを祖先に持つ人魚に、その役目が課されるのは不思議ではない。

だがメデューサの首が魔除けとして使われたように、毒を持って毒を制す、化け物には化け物をぶつけるというのは普通のことであった。

アイルランドを中心に、中世ヨーロッパの教会や城などの建造物にはシーラ・ナ・ギグと呼ばれる彫刻が施されていることがある。

その根拠は2つ。

もう1つの根拠は、古来より女性が陰部を見せつける行為には、魔を払う効果があるとされているからだ。

例えば古代エジプトでは、女性が陰部を畑に対して晒す風習があった。

エジプト人はブバスティス祭では、舟が街に近づくと、女性たちは服を頭の上までまくりあげて陰部を晒したという。

これを見たヘロドトスはカルチャーショックを受け、その行為に「アナ・スロマイ」と名付けた。

ヘロドトスは知らなかったようだが、アナ・スロマイがあるのはエジプトに限った話ではない。

例えばカタルーニャには「女陰を見せれば海が鎮まる」ということわざがあり、漁師の妻が夫を海に送り出す際に陰部を海に見せるという習慣がある。

ロシアの伝承では、若い女性がスカートをまくりあげることで、クマを追い払えるという。

シーラ・ナ・ギグがアイルランドに最も多いことを考えると*14、セイレーンの股を開くポーズも破邪を期待したものでもある可能性は十分にある。

セイレーンは半人半鳥の怪物で、人魚は人々に知恵や豊穣をもたらす神である。

スタバがセイレーンをロゴに採用したのは半分偶然だが、こうしてみると良い選択ではないかと思う。

人魚が貝殻のブラをするようになったのが20世紀になってからと知って*16、もっと人魚のことが知りたくなり本書を手にとった。

出版されたのは2021年2月と比較的新しく、人魚について知りたいと思ったらまず本書を読めばいいのではないか。

日本の人魚といえば、しばらく前に人魚をネタにした増田がバズっていた。

Kindle PaperwhiteはKindle本の横断検索ができるから便利。

*9:アイルランド民話には神ではなく怪物として「メロウ」と呼ばれる人魚が存在する。

『フィシオログス』は文章による記述のみで、挿絵をつけたのは『怪物の書』が最初。

したがってシーラ・ナ・ギグがセイレーンを変化させたのではなく、アイルランドにあった風習がセイレーンに股を開かせ、シーラ・ナ・ギグの量産に繋がったと考えるのが妥当である。

(元記事の出典:Htena Biog/骨しゃぶり (id:honeshabri) 骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ)



(出典 stories.starbucks.com)

『スターバックス』『セイレーン』に関連する動画

Starbucks Logo History | Evologo [Evolution of Logo] - YouTube

(出典 Youtube)
The Story Behind the Starbucks Mermaid - YouTube

(出典 Youtube)

『なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか』についてTwitterの反応

ハロウィンの怪人
@Phantom_of_USJ

スタバに一度も行ったことがないし、行きたいとも思わないけど、こういう知識系の話はかなり好き。ところでスタバのアレってセイレーンって名前だったのね。かつ尻尾ではなく、手かと思ってた。なぜスタバのセイレーンは股を広げているのかhttps://t.co/xpP7SHD9ej

2022-10-21 23:20:37

(出典 @Phantom_of_USJ)

𓆲領主𓆲
@glorificatio

つまり、公式にかつ伝統的に「くぱぁ」しているってことか / 他221件のコメント https://t.co/NMAvwjSLwd “なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり” (1107 users) https://t.co/Boq5TFKnSZ

2022-10-21 10:55:39

(出典 @glorificatio)

Fujii Ryoichi
@ffi

読みごたえのある面白い記事だった。またこういうの書きたい。:なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/cD53QA7s24

2022-10-21 08:06:20

(出典 @ffi)

寺尾順二
@odaomonaga

なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/kOuxMVKb8U 考えた事は無かったが、あの二股は隠部を見せつけるポーズだったのか。しかもその行為には複雑な歴史や複数の目的が。

2022-10-21 06:49:13

(出典 @odaomonaga)

カック(わんわん)🏃‍♂️
@roundheadedboy

ふむ、クマを追い払うには若い女性がスカートをまくり上げるといいのか🤔 "なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり" https://t.co/rkDq3KOnh2

2022-10-19 13:47:41

(出典 @roundheadedboy)

kaerudayo
@kaerudayo

いろいろ合成された魔除けなんじゃないかと思ってたが。古今東西、魔に見られてはいけない、彼らが目を逸らすものを身につけたり、見たくないものを見せつけるというのが、魔除け。 / “なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃ… https://t.co/9nhRrnc1dS

2022-10-19 09:25:08

(出典 @kaerudayo)

ひま𓂙
@rAy_HimA

古代の神とかその扱われ方が好きなわい楽しく読ませてもらった。下の方にある恋柱甘露寺の服飾デザインの記事も良かった👗海外の美術館とか建造物はよ行きたいなぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/HxpCxnMrK4

2022-10-19 08:57:33

(出典 @rAy_HimA)

スゴ本の中の人
@Dain_sugohon

「女陰を露出することで問題が解決する。古事記にもそう書かれている」なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/sj5S657NvZ

2022-10-18 22:55:34

(出典 @Dain_sugohon)

いづみみなみ🌞異世界女子監獄連載中
@idumi_minami

こういう雑学好き「毒を持って毒を制す、化け物には化け物をぶつける」ってバケモンにはバケモンをぶつけんだよ!!のまんまだし古代からあった考えなの笑うなぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/Ny2jEwRTLk

2022-10-18 22:40:23

(出典 @idumi_minami)

filinion
@filinion_es

メデューサみたいな有名どころでも下半身が人間だったり蛇だったり馬だったり諸説あるし、稲荷神でさえ本体が狐だとか神使が狐なだけだとか言われるので、セイレーンが鳥だったり魚だったりしてもおかしくはない。 / “なぜスタバのセイレーンは… https://t.co/GyxJein4KM

2022-10-18 22:07:49

(出典 @filinion_es)

魔宵蛾(休眠中
@mayoiga

なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/MKPpQN9SKs 意訳店名の元ネタ『白鯨』から海繋がりで木版画採用セイレーンは獣人>人魚な神と習合>某一神教「獣人はえっち!修道院は負… https://t.co/bTe5AFJ2pb

2022-10-18 21:51:56

(出典 @mayoiga)

LM-7
@LunarModule7

そもそもセイレーンは半人半鳥というイメージのほうが一般的では?再生、豊穣、破邪の効果をもつ淫婦のポーズは文化を超えて世界に敷衍しているようで興味深い。 / “なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり” https://t.co/F5PJPlAArJ

2022-10-18 21:17:56

(出典 @LunarModule7)

グリマル
@kazuki_murata

ここニンジャスレイヤーぽい→“女陰を露出することで問題が解決する。古事記にもそう書かれている。 ” / “なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり” https://t.co/zaAowYoiVl

2022-10-18 21:17:12

(出典 @kazuki_murata)

Demi
@kinoto_u_0

なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/Ywca0hSdtM 思った以上に真面目な考察だった読んでいてふと、シーラ・ナ・ギグを思い起こしたら、案の定、説明がでてきた

2022-10-18 20:20:30

(出典 @kinoto_u_0)

homla
@hgmikle

すごい教養記事だ情報が濃い。スタバのロゴでここまで書ける人ほとんどいないでしょ…☕️なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり https://t.co/h9Q97zHGsu

2022-10-18 19:03:41

(出典 @hgmikle)

ちょすけ
@tyosuke2024

宗教的な意味合いがあったのね / 他185件のコメント https://t.co/tJC8KNpdYm “なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり” https://t.co/4y9Hz3KNzQ #宗教 #書籍 #文化

2022-10-18 18:34:15

(出典 @tyosuke2024)

FAM8

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事
アーカイブ