中立化は非現実的、ウクライナ戦争の終結、考えうる「6つのシナリオ」・・ネットの反応まとめ
ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月半以上が経過したが、激しい戦闘は今も続いています。
この紛争はどのような結末を迎えるのでしょうか?
さまざまな分析が発表されています。
[ロンドン発]ウクライナ軍の激しい抵抗で、ロシア軍はウクライナの首都キーウからの撤退を終了しつつあり、東部や南部の戦いに集中し始めた。停戦や和平合意によって現在の前線が固定された場合、ロシア軍は再侵攻に備えて部隊を再編成する時間を稼ぐことができる。
西側はウラジーミル・プーチン露大統領の領土的野心を封じ込めるために「戦争恐怖症」を克服する必要がある。いま考えられるシナリオを検証した。
キーウから撤退し始めたロシア軍
『モスクワ・ルール ロシアを西側と対立させる原動力』の著書があるロシア研究の第一人者で、英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)上級コンサルティング研究員を務めるキーア・ジャイルズ氏が欧州ジャーナリスト協会(AEJ)の討論会に参加し、戦争終結の6つのシナリオを指摘した上で「忘れてはならないのは、プーチン氏はそもそもウクライナという国家を消滅させるためにこの戦争を始めたということだ」と強調した。
プーチン氏がソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的大惨事」と呼んだことはよく知られている。
しかし発言を額面通り受け取ってはならない。プーチン氏は親露派が支配する東部ドンバスの独立を承認した2月21日の演説などで「ウクライナはボリシェビキによって作られた」と歴史を100年以上さかのぼり、このプロセスを逆転させると宣言した。プーチン氏はソ連ではなく、ロシア帝国の領土が失われたことを嘆いてみせたのである。
その「ウクライナを国でなくする」という計画が頓挫した今、プーチン氏は面子を保つ現実的な落とし所を見つけなければならない。ジャイルズ氏は考えられる6つのシナリオを列挙した。
第一のシナリオは、プーチン政権が倒れるか否かにかかわらずロシアが崩壊し、ロシア軍がウクライナの領土から撤退する。ウクライナ軍参謀本部によると、ロシア軍の戦死者は1万7800人。軍事的損失だけで258億ドル(約3兆1700億円)以上という試算もある。
最もあり得るのはロシアの一方的な勝利宣言
第二に、ウクライナが崩壊する。ジャイルズ氏は「ウクライナ軍の復元力がいつまで続くか内部関係者しか分からない」と言う。1940年、ソ連との冬戦争で国土の一部を失いながらも独立を守ったフィンランドのようにウクライナ軍も粘り強い抵抗を見せる。しかしいつまで耐えられるのか。ウクライナも譲歩を迫られる。
第三に、ウクライナが西側の支援を失い、ロシア軍の支配するクリミア半島や東部の領土をあきらめて戦争を幕引きする。
第四に、膠着状態のまま兵員や装備を注ぎ込んで何年も戦争を継続する。双方とも支配地域を拡大できずに消耗戦に突入する。
第五に、2008年のグルジア(現ジョージア)紛争、ロシア軍による15~16年のシリア軍事介入、14年の東部紛争のミンスク合意と同じように機能しない停戦を西側が働きかける。モスクワでつくられたロシアに有利な停戦案に署名するようウクライナに強いる。「全く機能せず、長続きしないことはみな承知している」(ジャイルズ氏)という。
ジャイルズ氏が最もあり得ると分析するのは第六のシナリオだ。
ロシアが現状に合わせて一方的に勝利宣言を行い、戦闘を終結する。現にプーチン氏はゼレンスキー政権を倒して傀儡政権をつくる作戦をあきらめ、東部や南部を解放する目標に縮小している。兵員や装備の甚大な損失は他の国と違ってロシアではそれほど問題にならない。第一次大戦や第二次大戦でロシア(ソ連)はそれぞれ約330万人、最大2700万人も犠牲を出している。
ゼレンスキー氏が唱える中立とは
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3月27日、ロシアとの和平交渉を前に独立系露ジャーナリストとのインタビューに応じ、「安全保障と中立、ウクライナの非核のための準備ができている。これが最も重要なポイントだ」と発言した。ゼレンスキー氏は自国の外務省や国防省の意見にほとんど耳を貸さず、大統領府が中心となって和平案を作成したと言われている。
欧州で中立政策をとる国はスウェーデン、フィンランド、スイス、オーストリア、アイルランドの5カ国。スウェーデンとスイスは軍事的な中立が自国の利益になると考えており、アイルランドは北アイルランド問題を抱えるイギリスとの関係もあって歴史的に中立を続けている。
オーストリアは第二次大戦後、主権を回復する条件として中立を守り、フィンランドは地理的に近いロシアの軍事力や政治的影響力に弱いため、中立を強いられている。
ゼレンスキー氏の中立はフィンランドを意識しているように聞こえる。筆者はジャイルズ氏に「どうしてゼレンスキー氏の中立案を6つのシナリオに加えなかったのか」と質問した。
「中立というのは素敵な響きだ。しかし安全保障を伴うウクライナの中立を求める状況は2014年当時のウクライナと同じだ。ロシア軍のクリミア侵攻と併合、東部紛争を止められなかったことを忘れてはいけない」
ジャイルズ氏はこう答えた。
「ゼレンスキー氏のインタビューが西側メディアの見出しになる時、文脈やニュアンスが見逃される。西側研究者が考える中立という言葉はゼレンスキー氏もウクライナも絶対に使えない。今よりひどい状況に追い込まれることが分かっているからだ。見逃されている要素は現実に機能する安全保障だ。その意味で西側がウクライナへの武器供与を止めることはあり得ない」(ジャイルズ氏)
バイデン氏「プーチン氏を権力の座にとどまらせてはいけない」
「この男を権力の座にとどまらせてはいけない」と3月26日にワルシャワでプーチン氏を指弾したジョー・バイデン米大統領の発言をどうみるのか、ジャイルズ氏に尋ねた。「バイデン氏が台本にない発言をする新たな一例に過ぎない。考え抜いたわけではなく、その場で飛び出したアドリブだ。西側メディアは政策を示唆する発言のように取り上げたが、実際にはそのように受け取られることも考えていない、ただの思いつきかもしれない」と言う。
「バイデン氏は米大統領というより1人の人間として発言したと思う。問題はバイデン氏が発言したとたん、米政府によって政策ではないと打ち消されなければならないことだ」(ジャイルズ氏)。レジームチェンジ(体制転換)は幻想だ。プーチン氏がいなくなれば、ロシアは生まれ変わるという考えは甘過ぎる。プーチン氏はロシアであり、ロシアはプーチン氏なのだ。プーチン氏が消えてもプーチン2.0がすぐに現れるだけだ。
ジャイルズ氏は昨年9月、「ロシアを抑止するもの」と題する報告書を発表している。ロシアに侵略を思いとどまらせた過去の成功例と失敗例を詳細に調査した結果、驚くべき一貫性が浮き彫りになったという。ロシアは敵対国が脅威に直面して後退した場合には成功を収めるが、同じ敵対国が自分自身や同盟国、パートナーを守る強固な意志と決意を示した場合には後退してしまうのである。
ロシアは占領下または支配下にある領域を拡大することで自国の安定と安全を追求してきた。バルト海の飛び地領カリーニングラードのように、黒海沿岸を守る軍事拠点にクリミア半島を変貌させたのも、この欲求を強く反映している。もう一つのパターンは大きな抵抗に遭遇した時、引き揚げる用意があることだ。革命家ウラジーミル・レーニンは「銃剣で探り、粥を見つけたら突き進み、鋼鉄にぶつかったら撤退だ」という言葉を残している。
スヴェン・ミクセル元エストニア国防相は「プーチン氏にとって、弱さは強さよりも挑発的である。われわれの弱さで誰かを誘惑してはならない」との懸念を示している。弱さはプーチン氏を挑発する。停戦や和平合意に向け、またぞろ西側ではプーチン氏に対する宥和主義が頭をもたげている。ジャイルズ氏は「ウクライナにおけるプーチン氏の野望を抑えるのは完全な軍事的失敗だけだ」と断言している。
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<このニュースへのネットの反応>
ロシアが勝利宣言をしたところで戦闘を止めるとは思えない、勝利宣言をさせるために南東部を見捨てるなんて言う選択はゼレンスキー大統領にはできないと思う。勝利宣言後、西側諸国の経済制裁の温度差から対立が生まれる可能性もある。なので、ロシアの勝利宣言で終わることなんて期待せず、ロシアがどういう動向を取ろうとも制裁を止めず、プーチン引退まで追い込むことが大事。
日本は大した制裁を科してません。制裁を続けろと他人事のように声を上げるのは簡単です。私の持論に反論してほしいのですが西側の制裁は自分の身を削るのも同義です。ウクライナからの穀物輸送に頼っている食糧事情やウクライナの再建、ロシアとの緊張継続を考えるとそれが経済的な負の財産となるのは明白です。そこで提案なのですが、その経済的損失は日米が肩代わりするのでしょうか?
日本人はいつもいつもカッコいいことばかり言って何もしないように思えます。改憲にしてもそうです。やるといったからにはやるんですか?日本が民主主義国家である以上、決議するというのなら私は一日本国民として従います。
もうNATOや米の介入が入って良い頃合いでしょ
EU、特にドイツのお花畑バカも今回は危機感それなりにあるみたいだし、ロシアの経済制裁はしばらく続くでしょう。すぐに投降しなかったおかげだね。とっとと逃げるような奴と一緒に戦うお人好しなんているわけないんだから。
「弱さは強さよりも挑発的」、示唆に富む指摘だ。橋下の発言や態度なんかはまさにこれよの。外患誘致に近い愚行
アメリカ上院でレンドリース法の復活が可決したらしいな、下院で可決するかは分からんが、時代がWW2まで逆行している。
>兵員や装備の甚大な損失は他の国と違ってロシアではそれほど問題にならない。 畑から兵隊が採れるからな。今回それをロシア世論が許さないんじゃないかと言われてるからどうなるんだろうね。
米国でのレンドリース法(武器貸与法)の復活=軍事支援国への武器の無制限使用許可。ヒトラーと違ってプーチンは核ミサイルを持ち使用宣言している。しかもロシア支援の中国がこのまま黙っているはずがない、同様の武器支援をする。また人類滅亡へのシナリオが1ステージ進む。ロシアだけではなく今度はアメリカを、誰か止めてくれ。
ジョージアみたいになるだけ。さあ、次はどこかな
レンドリース法、あれ無償じゃないんで返さないといけないんですよ。金が無理なら米国企業への優遇とか土地の貸与で。そう、土地の貸与(米軍基地)です。ウクライナのNATO加入を嫌がった結果、かつて独ソ戦でお世話になった(そして踏み倒した)レンドリース法で米軍基地が真横にできる可能性とか笑い話ですよね
現状は被害国の代表としてだけ目を向けられてるが、開戦前の立ち回りもなんなら今も感情的に舵切るのが目立ってるし、終戦後に最も外交力を求められる中立化なんてとても期待できないだろ。終戦後なんて心配しなくても今回の支払いでアメリカが勝手に手をつける
戦争をしている国は有償か無償かなんて考えずに、とにかく武器があれば使うんだよ。使わないと国がなくなるから。実際にスターリンは米国の供給能力以上に要求していたし。チャーチルは米国からソ連に輸送中の武器を横取りして使っていたw
レンドリース法は武器のみの戦争参加。参戦は兵員派遣を添えた戦争参加だ。
そうです。そしてイギリスは2006年に完済し、ソ連(ロシア)は踏み倒した。レンドリース法の恐ろしいところは「返す気があるなら返済完了まで潰れることを許さない」点です。中立化はしりませんが「ウクライナが武器を使うほど米国寄りになっていく」のです。なので(ロシアの墓穴に)笑える
だから、対抗上、中国もロシアに武器支援を始める可能性が高い。その時点で、開戦宣言はないものの事実上の第三次大戦の開始だ。
そしていま、世界では、ロシアを叩きたいグループと、第三次大戦を回避したいグループが、ぶつかり合っている。
ウクライナ侵攻始まった当初、「第三次大戦になりうる」ってコメしたらロシア擁護派に*にされた思い出。ロシアによるウクライナ侵攻を放置すれば武力による領土拡大が各地で起き、介入すれば現状。とはいえロシアと中国足してもアメリカ1国に勝てないんだろうなぁ
まあ、アメリカの国防費はこういう事態を想定して作られているからな。当年度予算になくても、有形無形の軍事資産の蓄積が大きい。各国にある駐留米軍の基地や人員などもそうだな。
せんちねる>>中国が何より恐れるのは台湾侵攻前のアメリカとの対立。ウクライナの民間人虐殺にさえ批判的なコメントを出し始めた中国が自国への経済制裁が確定する武器支援を行うことは決してあり得ない。隣国と違ってそこまでアホじゃないからな。