
パルワールドは、2024年1月にリリースされたモンスター収集型のサバイバルゲームで、その独自のゲームプレイとデザインが話題を呼びました。
しかし、同時に「ポケモン」のデザインを模倣しているという疑惑も浮上し、業界内外で大きな論争を巻き起こしています。
最近、このゲームに関する新たな展開がありました。
それは、元デザイナーによる内部告発です。
この告発は、なぜ彼が決死の覚悟で行動に出たのか、そして業界全体にどのような影響を与えるのかについて考察します。
Contents
1. 序章:パルワールドとは?
「パルワールド」は、株式会社ポケットペアが開発したインディーゲームで、クラフトやサバイバルの要素を含む新感覚のモンスターゲームです。
2020年代に注目を集め、特に「ポケモン」に似たモンスターのデザインやゲームシステムが話題となりました。
しかしその一方で、ゲーム内の「パル」と呼ばれるキャラクターが他の人気ゲームに似ているという批判を受け、特に「ポケモン」に酷似しているという指摘が多く見られます。
この炎上は、最終的に任天堂や株式会社ポケモンがポケットペアに対して著作権侵害や特許権侵害で訴訟を起こす事態にまで発展しました。
この訴訟は「ポケモン」のデザインに関する部分だけでなく、ゲーム仕様そのものが特許を侵害しているという主張も含まれており、業界に波紋を広げました。
では、なぜこのような状況が生まれたのでしょうか?
それを解き明かすためには、元デザイナーによる告発の内容を見ていく必要があります。
2. 元デザイナーの告発:その内容と背景
2024年9月、元パルワールドのデザイナーがX(旧Twitter)で内部告発を行い、大きな注目を集めました。
彼は、パルワールドが「ポケモン」を模倣しているという疑惑について具体的な証拠を提示し、開発元であるポケットペア社が意図的に類似したデザインを採用したと主張しました。
この告発は、任天堂とポケモンが特許権侵害として提訴したこととも関連しており、ゲーム業界における知的財産権の問題を再び浮き彫りにしています。
この人物は、ゲーム開発の初期に参加していたと主張し、ポケットペア社のCEOから「ポケモンに似たキャラクターをデザインするよう指示された」と暴露しています。
エブリデイ氏によると、彼がデザインしたモンスターの一部は、実際に他の有名モンスターゲームに酷似しているキャラクターを参考にしており、特に「アブソル」と「ゾロアーク」の合成に近いものが作成されていたとしています。
この告発では、開発初期に「フェイクモン」(偽モンスター)を模索していたという話や、他のゲームから「モデルのぶっこ抜き」(データの盗用)を行った可能性が示唆されていました。
また、彼は1ヶ月間しかプロジェクトに関わっていなかったことも告白しており、短い在籍期間であったため全容を把握していない部分もあると述べています。
それでも、CEOからは「ポケモン人気ランキングに入るようなキャラを作れ」と明確に指示されたと主張し、モンスターのデザインが意図的に他の作品に似せられた可能性を示唆しています。
こうした暴露の背景には、デザイナーとしてのプライドや、開発中に受けた精神的なストレスも影響しているようです。
報酬が見合わないと感じてCEOに相談した際、「仕事を辞めたほうがいい」と言われ、そのまま退職に至った経緯も詳細に語られています。
告発後、彼は自身の行動が大きな波紋を呼ぶことを予測しながらも、真実を伝えるために決死の覚悟で行動したと述べています。
3. パクリ疑惑の本質:ゲーム業界における境界線
パルワールドのパクリ疑惑の中心にあるのは、ゲーム内のモンスターやキャラクターのデザインが、他の人気ゲームに似すぎているという指摘です。
特に、「ポケモン」との類似性が度々議論されていますが、これに限らず「テムテム」や「原神」とも比較されることがあります。
こうした問題は、ゲーム業界全体においてどこまでが「インスピレーション」であり、どこからが「著作権侵害」なのかという、曖昧な境界線を浮き彫りにしています。
元デザイナーのエブリデイ氏は、「フェイクモン」と呼ばれるキャラクターをデザインするために、他のゲームを参考にするよう指示されたことを強調しています。
具体的には、彼のデザインしたモンスターが「アブソル」や「ゾロアーク」といったポケモンと非常に似ているとされ、また一部のキャラクターは他のゲーム(例: テムテム)のキャラクターに似すぎて、開発中に没になったとも語られています。
さらに、エブリデイ氏は「バフォメット」というキャラクターも自分のデザインであると主張しており、ポケットペア社が彼のデザインをそのまま使用していたことを告発しています。
これが本当であれば、著作権侵害だけでなく、開発者としてのクレジットが適切に与えられていない可能性も浮上します。
一方で、パクリやインスピレーションの問題は、ゲーム業界全体で広く議論されているテーマです。
多くのゲームが過去の作品から何らかの影響を受けている中で、どの程度までが合法であり、クリエイティブな発展として許容されるべきかは、明確に判断しづらい部分があります。
これに関しては、デザインやゲームシステムの「独自性」をどのように定義するかがポイントとなりますが、現実にはその境界線は非常に曖昧です。
4.告発者の動機:なぜ告発を?
元パルワールドデザイナーが告発に踏み切った動機は、複数の要因が絡み合っていると考えられます。
まず第一に、彼は、職業倫理に基づく強い信念を持っていた可能性があります。
彼は「パクリはしたくない」と訴えており、社内でのモラハラや遠まわしな圧力を感じていたとされています。
このような状況下で、自身のクリエイティブなプライドが傷つけられることに耐えられなくなった可能性があります。
また、告発者は、精神的な病を抱えていたとも言われており、今回の騒動がその症状を悪化させた可能性も指摘されています。
このような精神的な圧力が、彼を告発に駆り立てた一因となったかもしれません。
さらに、彼の告発には、個人的な葛藤や企業文化への不満も含まれている可能性があります。
ポケットペア社のCEOである溝部拓郎氏が「任天堂は知り合いだし訴えられない」と豪語していたことや、「ポケモン人気ランキングに入るようなキャラを作れ」と指示されたことなど、社内の方針に対する不満が蓄積していたと考えられます。
最後に、この告発は単なる内部告発以上の意味を持つ可能性があります。
それは、業界全体への警鐘として機能することです。
クリエイターたちは、既存作品からインスピレーションを得ることと模倣することの境界線を再認識し、より高い倫理基準を持って作品制作に取り組む必要があるというメッセージを伝えようとしているのかもしれません。
このように、元デザイナーの告発には複雑な背景と動機が絡んでいると言えるでしょう。
まとめ
元パルワールドデザイナーによる告発は、単なる模倣疑惑以上に深い問題を提起しています。
それは、クリエイティブ産業における倫理観や知的財産権への意識です。
今後、このような問題がどのように解決されていくかは不透明ですが、一つ確かなことは、クリエイターたちがより高い倫理基準と法的知識を持って作品制作に取り組む必要があるということです。
もしこのエブリデイ氏の告発が事実なら、この事件が業界全体に与える影響は計り知れず、新たなスタンダードを築く契機となるかもしれません。