映画『ラストマイル』は、現代社会の闇を鋭く描いた作品で、複雑な人間ドラマと社会批判が交錯する衝撃的な物語です。
この映画は、単なるスリラーやミステリーの枠を超え、登場人物たちの深い心理描写と、その背景にある企業の無責任さ、そしてそれがもたらす悲劇を描いています。
本記事では、『ラストマイル』のストーリーを詳しく解説し、ネタバレを含めながらその真相に迫ります。
映画『ラストマイル』のあらすじ（詳細）
11月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”の前夜、世界的なショッピングサイト最大手から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。
やがてそれは、日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していくのです。
関東の4分の3を担う巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ（満島ひかり）は、チームマネージャーの梨本孔（岡田将生）とともに、未曾有の事態の収拾にあたることになっていきます・・・。
映画『ラストマイル』は、現代社会における個人の孤独や企業の非人道的な側面を描いた作品で、観客に強烈な印象を与えます。
物語は、山﨑たすく（中村倫也）の自殺未遂から始まり、彼と恋人の筧まりかを中心に展開される複雑な人間関係と、企業の隠された闇を追求するサスペンスです。
物語の発端 ：山﨑たすくは、デリファスの西武蔵野ロジスティックスセンターで働いていた従業員で、5年前にベルトコンベアの上に身を投げて自殺未遂を図りました。
彼は当時、爆破事件の犯人であった筧まりかとの結婚を考えていましたが、彼女との関係や仕事のプレッシャーから逃れられず、精神的に追い詰められていました。
山﨑たすくの苦悩： 山﨑たすくは、職場での過酷な労働環境に耐えかねており、特にデリファスの管理体制や労働者に対する冷淡な態度に不満を抱いていました。
彼の自殺未遂は、これらの問題が彼の精神に重くのしかかり、最終的に彼を破滅へと追い込んだ結果でした。
しかし、彼の行動は単なる絶望によるものではなく、「この状況を終わらせるための決断」だったのです。
筧まりかの計画 ：恋人の筧まりか（仁村紗和）は、山﨑たすくが自殺未遂を図った責任がデリファスにあると確信しており、彼女自身が会社に問い合わせを繰り返しましたが、デリファスからは一切の返答がありませんでした。
この無視された経験が、彼女の中で復讐心を育てることになりました。
彼女は、山﨑の行動を無駄にせず、真相を明らかにするため、ブラックフライデーを狙った連続爆破事件を計画し、実行に移します。
事件の進行 ：筧まりかは、ブラックフライデーの10日前から始まるセール品を購入し、その中に爆弾を仕掛けて倉庫に戻しました。
これにより、セール期間中にこれらの商品が再び購入されるとともに、連続爆破事件が発生するよう計画しました。
そしてブラックフライデーの前日、自らに仕掛けた最後の爆弾を使って自殺を図ります。
この時、彼女は爆発によって自分が犠牲者となり、事件を拡大させる目的がありました。
事件の謎：しかし、筧まりかが仕掛けた爆弾による連続爆破事件は、実際には彼女が持っていた最後の爆弾を使った自殺によって始まったものでした。
この爆弾は、ブラックフライデー前日に届いたデリフォンという商品に仕掛けられたものではなく、彼女自身が持ち込んだものであり、事件の真相がすぐに明らかにならないよう巧妙に仕組まれていたのです。
事件の詳細と真相
この章では、筧まりかがどのようにして連続爆破事件を計画し、実行に移したのか、その詳細を掘り下げていきます。
また、事件の背景にあるデリファス社の闇と、筧まりかが事件を起こすに至った動機についても詳しく解説します。
ブラックフライデーを狙った復讐劇 ：筧まりかは、山﨑たすくの自殺未遂がデリファス社の責任であると確信し、会社に対する復讐を計画しました。
彼女の計画は、ブラックフライデーのセール期間中に連続爆破事件を引き起こし、会社の信用を失墜させることを目的としていました。
彼女は、11個の商品に爆弾を仕掛け、その商品が購入されるとともに爆発するように仕組んだのです。
爆発のカラクリ：特に重要なのは、筧まりかが自らの死を利用して事件を起こした点です。
彼女は、ブラックフライデー前日に自殺することで、自分の死を連続爆破事件の始まりと見せかけるようにしました。
この計画により、最初の爆発が彼女自身によるものであるとはすぐに判明せず、事件はさらに複雑化しました。
企業の無責任さと闇 ：筧まりかがこのような過激な手段に出た背景には、デリファス社の冷酷な対応がありました。
山﨑たすくの自殺未遂を受けて、会社は何の対応も取らず、彼の苦悩を軽視し続けました。
さらに、筧まりかが何度も問い合わせを行ったにもかかわらず、デリファスは一切の返答をしなかったことで、彼女の復讐心は燃え上がり、事件へと発展したのです。
次の章では、主要キャラクターの心理描写に焦点を当て、彼らがどのようにして事件に巻き込まれていったのかを詳しく解説します。
主要キャラクターの心理描写
映画『ラストマイル』の魅力は、複雑に絡み合ったストーリーだけでなく、登場人物たちの深い心理描写にもあります。
特に山﨑たすく、筧まりか、エレナといったキャラクターたちが、どのようにしてそれぞれの行動に至ったのか、彼らの内面に迫ることで、物語の理解が一層深まります。
山﨑たすくの葛藤と絶望：山﨑たすくは、デリファス社での過酷な労働環境に耐えながらも、恋人である筧まりかとの将来を夢見ていました。
しかし、仕事でのプレッシャーや会社からの非人道的な扱いにより、次第に精神的に追い詰められていきます。
彼は、仕事に対する責任感が強く、会社の中で自分が果たすべき役割を常に考えていましたが、その重圧が彼の心を蝕んでいきました。
山﨑がベルトコンベアの上に飛び込んだ自殺未遂事件は、その葛藤の最終的な結果です。
しかし、彼の行動は単なる「死にたい」という衝動からではなく、「この状況を自分の手で終わらせたい」という強い意志が働いていたと考えられます。
彼が選んだ自殺の方法が、ベルトコンベアの稼働率を「2.7→0」にすることを意図していたのは、彼自身が何らかの形で事態を制御したかったことを示唆しています。
筧まりかの苦悩と復讐心 ：筧まりかは、山﨑たすくが職場で感じていた苦しみを誰よりも理解していました。
彼女は、彼が自殺未遂を図ったのは彼自身の弱さではなく、デリファス社の非人道的な環境に原因があると確信していました。
彼女は、何度も会社に問い合わせを行い、責任を追及しようとしましたが、会社は、一切の対応をせず、彼女の訴えを無視しました。
この無視された経験が、筧まりかの中で復讐心を芽生えさせ、やがてそれが彼女を破滅的な行動へと駆り立てる結果となります。
筧まりかの行動は、単なる愛情からのものではなく、山﨑たすくが受けた苦しみを代弁しようとする強い決意がありました。
彼女がブラックフライデーに連続爆破事件を引き起こしたのは、山﨑たすくの死を無駄にしないためであり、彼女自身もまた、社会に対する深い怒りと絶望を抱いていました。
彼女の最期の行動が、自身の命を犠牲にしてでも事件を完遂させようとする意志の表れであったことは、彼女の苦悩と復讐心の深さを物語っています。
舟渡エレナとアメリカ本社の関係：舟渡エレナ（満島ひかり）は、この物語の中で重要な役割を果たすキャラクターの一人です。
彼女は、アメリカ本社から日本に派遣された人物であり、筧まりかからの爆弾予告メールを受け取っていたにもかかわらず、それを深刻に捉えませんでした。
エレナは、過去に一度、アメリカで筧まりかと接触したことがあり、彼女が何らかの大きな事件を引き起こす可能性があることを認識していましたが、それでも事件の未然防止には動きませんでした。
エレナの心理状態は、彼女がアメリカ本社の指示に従って行動している一方で、個人的には不安や恐怖を感じていたことを示しています。
彼女が山﨑たすくのデータを消去したのも、恐怖心や自己保身が背景にあった可能性があります。
また、彼女が事件の全貌を理解しつつも、会社の命令に従わざるを得なかったことから、彼女もまた企業のシステムに支配された一人であったと言えるでしょう。
ラストマイルのテーマとメッセージ
『ラストマイル』は、単なるエンターテインメント作品ではなく、現代社会の諸問題に対する鋭い批判を含んだ映画です。
特に、巨大企業が個人に与える影響と、そこから生まれる人間の苦悩や絶望が描かれています。
企業の無責任さと個人の犠牲 ：映画を通じて描かれる最大のテーマは、企業の無責任さがいかにして個人を追い詰め、破滅へと導くかという点です。
山﨑たすくや筧まりかが経験した苦しみは、デリファス社という巨大企業の冷酷さから生まれたものです。
映画は、企業が利益を追求するあまり、労働者や個人の生活を犠牲にしている現実を浮き彫りにします。
現代社会への批判 ：また、映画は現代社会全体に対する批判としても捉えられます。
山﨑たすくや筧まりかのように、現代社会で「正常」であることを求められる個人が、いかにして精神的に追い詰められていくのかが描かれています。
彼らの苦しみは、現代の競争社会や労働環境における過剰なプレッシャーを象徴しており、映画を観ることで、観客は自身の生活や社会のあり方について再考を促されます。
まとめ
映画『ラストマイル』は、ただのミステリーやサスペンスではなく、現代社会の複雑さと、それがもたらす悲劇を深く掘り下げた作品です。
登場人物たちの行動や心理状態を理解することで、映画の持つメッセージがより鮮明に浮かび上がります。
山﨑たすくの自殺未遂や筧まりかの復讐、そしてそれらを取り巻く企業の無責任さは、私たちが普段目を背けがちな現実を突きつけています。
映画を通じて、今後の社会がどのように変わっていくべきか、また、個人がどのように生きるべきかを再考する機会を提供してくれます。
この作品が示すメッセージを深く受け止め、現代社会における自分自身の役割について考えることが、観客に求められているのです。
