日本で性的な犯罪の疑いが報じられ、その後、2月2日に日本代表チームを離れることになったサッカー選手のMF伊東純也選手は、所属するフランス1部リーグのスタッド・ランスで活躍しています。
代表離脱から9日後の2月11日には、敵地で行われたロリアン戦で、伊東純也選手は、右ウイングで先発し、試合最後までプレーしました。
日本では、アジアカップ参戦が許されなかった渦中の伊東純也選手がフランスでは、通常にプレーが許されたのでしょうか?
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伊東純也がフランス1部リーグのスタッド・ランスに復帰できた理由!
伊東純也選手が女性への性的な加害疑惑により刑事告訴されたことを受け、中東カタールでアジアカップを戦っていた森保ジャパンから途中離脱せざるを得なくなったのは2月2日のことでした。
その後、注目されていた伊東純也選手が代表チームを離れてから9日後の11日に、所属するフランス1部リーグのスタッド・ランスで突然戦列に復帰しました。
女性側が刑事告訴に踏み切ったのは1月18日のことです。
伊東純也選手の代理人弁護士も性的な加害はまったくの事実無根だとして、虚偽告訴容疑で告訴状を提出しました。
そして、その告訴は受理され、現在捜査が行われています。
このような状況の中で、日本サッカー協会(JFA)とスタッド・ランスは対照的な対応を示しています。
スタッド・ランスは、公式ウェブサイト上で、日本時間2月1日に、伊東に関するクラブとしての声明を発表しています。
「日本人ストライカーの人間的な資質と振る舞いに対して、スタッド・ランスはこれまで一度も疑問視したことはありません。しかし、今回メディアで報道された出来事が大阪でのインターナショナルブレイク中に行われた状況もあり、私たちは大阪の司法当局による調査を一方的に裏づける情報もまた持ち合わせていません。それでも現在に至るまで、私たちは選手(伊東のこと)との連帯を示しています。同時に今後は真相の解明につながる具体的な証拠を待ち望むとともに、いかなる法的な進展に対しても細心の注意を払いながら見守っていきます」(原文を翻訳)
「プレスプリンシプル」が尊重されたスタッド・ランスの対応!
スタッド・ランスのジャン=ピエール・カイヨ会長は、次のように伝えています。
「私は推定無罪にこだわる。話し合いのなかで、伊東はいつも通りの控えめな態度を見せながら『何も間違ったことはしていない』と主張している。なので、私には彼を信じない理由がない」
また、スタッド・ランスのウィル・スティル監督のコメントを次のように伝えています。
「フットボール以外で何が起ころうとも、準備ができていると感じているのならば、伊東純也は私たちのためにプレーしてくれると確信している。彼の周囲で起こっていることについて、クラブはよくコミュニケーションをとっている。それ以外は、いまのところ私たちの問題になっていない」
このような発言から、スタッド・ランスでは、「プレスプリンシプル」が尊重されたことが日本との大きな違いでしょう。
プリンシプル(principle)とは、英語の名詞で「原理」「原則」を意味します。
プリンシプルは、対象となる活動で「何を大切にするか」を定めたもので、プリンシプルを定めることで、目的達成に向けた一貫した活動ができるようになります。
プリンシプルは「何かしなければならないこと」ではなく、「何を大切にして行動するかを示すもの」で、戦略のように情勢に応じて変えるものではありません。
そして、そのようなスタンスの対応ができるよう伊東純也選手がこれまでに、監督や会長と強い信頼関係を築いていたことが大きな理由でしょう。
「スポンサーへの配慮」の対応の日仏の相違!
また、現時点でスタッド・ランスでは、「スポンサーへの配慮」を行っていないことが、クラブでの早期の先発復帰につながったと考えられています。
かたや日本・・・JFAの協賛企業には、キリングループやアディダス、全日空などの大手企業が名を連ねています。
昨年7月には、クレディセゾンの公式アンバサダーには、伊東純也選手が就任しました。
しかし、今回の問題をきっかけに、クレディセゾンの公式HPからは伊東純也選手に関するページや画像のほぼすべてが削除されてしまっており、その対応の早さに驚きました。
伊東純也選手についての最終的な判断は、ともに戦いたいと望む他の選手たちの思いよりも、伊東純也選手の性加害疑惑が社会に与えた風評により、社会的な信用、特にスポンサーへの影響を考えたことが大変大きかったとみられています。
こうしたスポンサーへの配慮は、昨今のジャニーズ問題や宝塚問題、松本人志さんの問題など、早い対応がとられる傾向が日本では際立ってきましたね。
日本サッカー協会は「ずるい」との批判も!
このスタッド・ランスでは、「プレスプリンシプル」を見た時、今回の問題に向き合って考えれば、できるだけ多くの事実を確認した結果、まだ伊東選手に違法行為があったと断定できる段階ではないので、『推定無罪の原則』で出場してもらうという結論も考えられたはずです。
伊東選手の代表離脱を決断するにしても「まだ事実関係は確認できていないが、性被害という問題の重要性を考えると、もし、被害があった場合に被害者がその傷を深めるようなことは決してあってはならない。そのため慎重に、代表から離れてもらうことにした」など、今回の問題について深く説明することができたはずでした。
こうした説明は聞かれずに、「伊東選手とともに戦いたい」というチームの声を理由として、それによって協会が対応を一度は保留し、二転三転して最終的に伊東選手の代表離脱を決めました。
その時、協会の田嶋幸三会長は「サッカーに集中できる環境」を作り、「伊東選手のコンディション」も考え、「パートナーの皆さん」にも配慮して「総合的に判断」したと説明しました。
並べられた理由は、チームの戦意、伊東選手の状況、スポンサーへの配慮といった「他の人のため」に決めたというものだったのです。
こうして日仏の対応を比べてみると、主体的、現実を見通した人間らしい誠意のこもった対応はどちらでしょう。